秩父市(旧大滝村)の山奥、埼玉県から長野県に通じる三国林道沿いの最奥集落に「中津川」という地があります。 今回の豪雪で孤立した集落が秩父には最後まで二つありましたが、その一つがここです。   かつて、国内林業華やかなりし頃、この集落はたくさんの人で賑わっていました。ジオパークに代表されるように、秩父地方は鉱業も盛んで、近くの日窒鉱山は全盛期5,000人の従業員とその家族がおり大きな町でした。 今は20軒ほどの集落から3kmほど奥に中島さんが経営する「王冠キャンプ場」があります。彼はいわゆる「山師(やまし)」で林業に携わっている方です。 現代の都会人、平坦に暮らす我々にとって、山の暮らしはなかなかイメージがわかず、誤解が多いと思います。ですが、その発想は真逆で、山は万物を与えてくれる豊かな存在でした。現金収入としては材木があり、食材としては食肉(ジビエ)から畑、山菜あり、登山・猟等文化的レベルも高かったと想像します。現に、中島さんは養蜂という非常にデリケートな生き物と共存しています。その蜂蜜は当館でも販売しており、大変好評です。 中島さんのような、山師(やまし)と接すると、ある感覚を感じます。現代人が急速に失いつつある、応用力対応力。災害に弱い都会人に代表されるように、全てを購入する事で対応する現代人は非常に不安定です。全てが受け身、被害者の発想ですね。   さて、今回、中島さんのキャンプ場に足繁く通うキャンパー達が、冬場は何なのでたまにはホテルでのんびり懇親しようと、利用してくれました。夜遅くまでギターを鳴らし語りあかしていました。キャンパーだけあってお互いに和気あいあい、楽しそうでした。 中島さんのキャンプ場は今回の豪雪で未だ様子を見に行けない状況で大変心配です。お彼岸までは入れないだろうと仰せでした。 新緑と紅葉は大変素晴らしい所で、訪れると心が洗われるようです。特に近くの中津峡は埼玉県随一の紅葉スポットとして有名です。 清流中津川の畔に佇む王冠キャンプ場が大被害なく、存続している事をお祈りしています。